2008年10月23日

フリーダ・カーロ 痛みとカタルシス1

前回のエントリーでディエゴ・リベラについて書いたので、今回はその妻で画家のフリーダ・カーロ(Frida Kahlo, 1907-54) について何回かに分けて書きたいと思います。今ではカーロのほうが人気があるんじゃないかしら。












さて、カーロと聞くと、あのうっすらヒゲが生えていて、つながった眉毛の自画像を思い浮かべる人が多いんじゃないかと思う。彼女の自画像は動きこそ無いけど、見るものに緊張感を与える。まあ、涙とか血とか時には胎児とか、微妙にグロくてもの凄く痛々しいイメージがワッショイ!って来れば、ドッキリしない方が不思議かもしれない。

18歳の時にあったバス事故の影響で傷を負い、生涯後遺症と痛み(あと夫リベラの浮気)に苦しんだからこういう絵を描いた、というのが通説なわけですが、それにしても彼女の絵はステキにエグい。

わたくしいつも思うのだけど、男性より女性の方が身体的・精神的な痛みに圧倒的に強い。生理痛とか出産とか男性中心社会で生きるとか、そういう痛いライフイベントが多いからなのかもしれないけど、ショッキングなイメージを使うのって大抵女性アーティストだよね。


まあ前置きはこれくらいにして、行きますぜ空想美術館!











My Birth, 1932, Oil on metal, Private Collection of Madonna.
「私の誕生」

わああああ、痛い痛い痛い!それ裂ける!裂けるって!!

自分の生まれる様子を想像して描いたという一枚。・・・こんな苦しいM字開脚見たことないぜ。インリン様ファンの男性陣には申し訳ないが、このポーズは本来こういうものだったんだよね!と爽やかに言おう。この絵の何がすごいって、生まれてるカーロが大人だって事。わたくし女性なので、頭でけぇー! こんなん出せねえー!とか思ってしまう。カーロの母親(生んでる人ね)の頭がシーツで覆われてるのもポイント。この頃実際に母親が亡くなっていると言うことだけでなく、生と死を対比させてるんですな。ベッドの上の絵は悲しむ聖母マリア("Virgin of Sorrow")。息子であるキリストの死を悼む姿です。

リベラとの結婚後も長いこと画家としては知られていず、趣味で家族や友人の肖像画を描く程度だったカーロ。そんな彼女が本格的に絵に取組み始めたのは、デトロイトで二回目の妊娠と流産を経験してから。事故で子宮と骨盤を大幅に損傷していたので、妊娠しても出産まで漕ぎ着けられないといわれていたそうだし、リベラがもう子供を欲しがらなかったので、薬で堕胎しようとするが失敗。リスクを帯びながらも帝王切開で出産することを決意した頃の出来事だった(最初の妊娠は胎児の位置が悪かった為中絶している)。彼女自身は命を取り留めたものの、精神的に大きな傷を負う。流産のすぐ後に描かれたのは「ヘンリー・フォード病院」だけど、この絵も同じ年に描かれている。

ちなみに「私の誕生」を現在所有しているのは歌手のマドンナ。雑誌の取材に語った所によると、この絵が好きではない人とは友達になれないので、友人にするかしないかのテストに使ってるそうです。いくらマドンナとはいえ、すごい試しっぷりだ。あと、この間離婚した夫のガイ・リッチーはこの絵がダメだったらしい。食欲がなくなる絵であることは間違いないからな。元妻が許さなくても、あたしが許す!

リベラの浮気性は相当どうしようもなかったらしいですが、カーロもガンガン不倫してたらしい。バイセクシュアルだったので、女性とも男性とも関係があったようです。











Flower of Life, 1943, Oil on masonite, Mexico
「命の花」
これは、まあ見てわかるように花なんだけど、他のものでもあるわけです。カーロは静物画によくセクシュアルなモチーフを入れてたんですけど、これは割とモロですね。見たまんま、真ん中の花の中心がアレ状態になってるナニで、先から雌しべ雄しべが噴出しております。花弁の部分が子宮と卵巣。突き破っちゃってるじゃん!どんだけでかいんすか!という突っ込みは無しにしても、やっぱり自分の身体や妊娠のことで複雑なものがあったんだろうなと思う。カーロの描く生殖器はエロくはない、解剖学的でどちらかというとグロい。全くロマンティックじゃないんですよ、女性画家特有の現象だと思う。
それにしても、こんだけ勢いよく噴出したらばっちり受精しそうだわ。子供こそ出来なかったけど、ここは夫婦そろって繁殖意欲は旺盛だったんだろうな。


長くなってきたので今回はこの辺で。次回はもうちょっとカタルシスに焦点を置いていきますよ。


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