2009年1月3日

EUパスポート保持者の夫を募集中

ギュスターヴ・クールベの「世界の起源」を書いていて思い出したのだけど、あれのパロディで面白いのがある。

セルビア出身のフェミニスト・アーティスト、タニア・オストイッチのパロディー、通称「EUパンティー」である。















Tanja Ostojic, L'Origine du monde, 2002. 「世界の起源」

EUの星マークの入ったパンティーを穿いている以外は、クールベの絵と同じ構図の写真(モデルはアーティスト本人)。

オストイッチはセルビアを含む他の東ヨーロッパとEUの関係をテーマにした作品を多く製作しており、その中でEUの経済的、政治的な権力とその尊大さを疑問視しています。この写真は色んな解釈が出来ると思うけど、まず最初に思いつくのはタイトルとの関係。ヨーロッパの起源とは実際何なんだろうか。EUってどこまでヨーロッパを代表するものなんだろうか。

フェミニストであるオストイッチは、EU加盟国以外の東ヨーロッパの女性の現状に焦点を当てます。
2000年のインターネット・プロジェクト「EUパスポート保持者の夫を募集中」は中々ショッキングな作品。




















Tanja Ostojic, Looking for a Husband with a EU passport, Interactive Web Project, 2000-2005
この作品でオストイッチは「EUパスポート保持者の夫を募集しています」と書いた自分のヌード写真を実際にウェブ上に公開した。写真の下には「応募書類をhottanja @hotmail.com まで送ってください。質問詳細などご遠慮なくどうぞ」と書かれています。

みらんは実際にこの作品を見たことがあるのです。
インスタレーションとして展示してあったのは、上の写真、この写真を見た男性達から送られてきたおびただしい数のEメールのプリントアウト、アーティストと男性達のメールでのやり取り、そして、彼女が選んだ一人の男性とベルグラードで始めて会った時のビデオでした(これもパフォーマンスの一環だった)。












オストイッチはメッセージを送ってきた男性たちとメールで交信を続け、7ヵ月間の交信の後にドイツ人アーティストのクレメンス・ゴルフと結婚、ドイツへの3年間の居住許可を手に入れます。その後デュッセルドルフに住みますが、2005年に許可が切れたとき、彼女には永住権ではなく2年間の期限付きビザが与えられます。オストイチはその年に離婚し、ベルリンのギャラリーで「離婚パーティー」と題したパフォーマンスを行っています。

このアートに対する姿勢というのはすさまじいものがある。
これはウェブで夫を募集して結婚してしまう、というもはやアートの粋を超えているんではないか、というプロジェクトなわけですが、実際に、多くの東ヨーロッパの女性達がこの手段で豊かな国に移住しているのも事実なのです。売春の一環のようによく言われますが、実際にあまり変わらなかったりする。

まるで囚人のように丸坊主のオストイッチは、裸でこそあれ、まるで性的な匂いを感じさせない。どちらかというと警察で撮られる写真みたいに直立、挑むような目つきでカメラを見つめる。それでも、送られてきたメールはすごいものばかり。「こんにちは、お嬢さん」から始まるものだったり、「君の写真見て勃起しちゃったよ・・・!」っていうのもある、っていう違いはあれど、どれもみな彼女を性的な対象として見ている。最初は仕事の話をしていた男も、メールの交信を重ねるうちに「毛はいつも剃ってるの?」と書いてきたり。

3年間結婚していても結局永住権は得られなかった、というところにEUの移民に対する厳しい姿勢が見えますが、それ以上にジェンダーやEUの現状に対して色んな疑問が湧き上がる作品。見た後すごくモヤモヤします。ショッキングです。

これを見た後にEUパンティーを見ると、また違った見方が出来るかもしれない。女性はパンツ脱がないとEUに入れないとか。

スロバキアがユーロを導入したというニュースを聞いたので、今回はハードコアでした。

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